第70回山梨県体育祭り山岳競技2017

今年の体育祭りは従来のリード種目と新たにスピード種目を加えた2種目で行いました。
目的は2020オリンピックフォーマットでも採用が決まったスピード種目への感心を高めると同時に、実際に体験する機会をつくることでしたが、募集定員8名に対して15名の参加(女性)があり、選手たちの意欲と好奇心の旺盛さを嬉しく思いました。
 
リード種目は例年通りレベル別にファンクラスとオープンクラスのふたつにカテゴリーを分けましたが、オープンクラスは企画段階から男女同ルートで行うことを検討し、実際そうしました。県内の選手のレベルは他県と比べると男女拮抗しているという感覚はありましたが、何より男女隔てのない競技によって全ての選手に刺激を受けてもらい、大会後に起きる何かしらの化学反応に期待してのことでした。
 
さて、そのオープンクラス、予選1本目は110°程度の(コンペにしては)緩傾斜ながら左右に大きく蛇行するラインで、手数は40手のエンデュランスルート(5.11c)。2本目は反対に130°の強傾斜をほぼ一直線に登る負荷の高いルート(5.12a/b)でした。タイプの違うふたつのルートを完登したのは、昨年の優勝者遠藤拓真選手と今年の国体代表若尾龍隆選手、女子は戸田萌希選手の3名だけでした。
 
決勝は5.12b/c程度のエンデュランスルートでしたが、予選を最も楽々と登りきった戸田選手はこれも全く危なげない登りで余裕の完登。遠藤拓真選手もよどみのない安定した動きをみせて完登。そして期待がかかった若尾龍隆選手は中間部での痛恨のZクリップが響き、残り数手を残したところでフォール。結果男子2位となりました。
女子2位は伸びしろ豊富な宮下涼選手(富士河口湖高校)が、素晴らしい粘りのクライミングで観客を魅了しました。
 
決勝進出した人数は5名でしたが、予選の順位は男女が交互につける混戦で、ここでも男女のレベルの拮抗を感じさせるものでした。
 
 
ファンクラスのほうはキャリアの浅い選手が大半でしたが、以前は良く見受けられたスタート直後からムーブをこなせないという選手は非常に少なく、おそらく普段からボルダリングに親しんでいる選手が多いことがうかがわれました。
 
完登には至らなかったものの、勝負をかけた気迫ある登りをみせた学生もいて、今後が楽しみな存在ですコンペは勝負ですから、自分の認識している力以上の力を発揮しし、またそれができる自分に気がついてもらえたらと思います。
 
決勝ではボルダリングで培った突破力を発揮した赤池翔弥選手が、岡部友和選手を振り切って優勝を決めました。その自力からして、上位のふたりはぜひ次はオープンクラスのオーダーに名を連ねていただきたいと思います。
 
最後は前述のスピード種目でしたが、こちらは予想以上の盛り上がりで、最速のレコードが塗り替えられるたびに会場は大いに沸きました。早く登るという単純明快なルールですが、実際はフィジカル要素以上の戦略性があり、試登の段階から経験したことのない爽快感と面白さを感じました。当然2本のルートを登った選手達もそれを感じたに違いなく、こうした体験を経て見るW杯やオリンピックはきっと新しい自分の可能性を感じてもらえると思います。
 
新しい試みは成功したと思います、これは審判員やビレーヤーを含めた運営員の周到な準備があって実現できたことでもありますので、見事に対応していただいた役員のみなさんに深く感謝いたします。
 
全体を見た私の感想としては、ボルダリングと比べてリードクライミング競技会の人気の薄さと、競技レベルの低さは気になるところでした。セッターとして長く携わってきましたが、近年はオープンクラスのグレードは大きく変わらないばかりか、今年は昨年より下げている状況です。ボルダリングの平均レベルと反比例しているかのようなリード競技力の停滞は、リードクライミングを愛好する自分としては捨て置けない状況であると改めて認識した次第です。委員のみなさんや他からも知恵をかりながら、少しでも状況を良くしたいと思います。
 
記:山森