チベット遠征2019 報告

この度、我々遠征隊は東チベットのShaluli shan-Gangga Massifに位置する未踏峰に成功しました。

遠征隊名称 東チベット四川省高山植物観花隊

隊長  今村量紀
隊員  新木勇人
    飯野心平
    斎藤耕市郎
    斎藤雄太
    原澤延幸
    小倉由美子
    木村祐子
連絡官 石原聡子
現地協力者  李慶、揚、羅布、他数名


東チベットに位置する甘孜チベット自治州の生康の村の協力で民泊させていただき、その村をベースとしてキャラバンを組み、馬をお借りして必要物資を4100㍍地点に運び、ABCを設営する事ができました。


ABCはそれは素晴らしいお花畑に囲まれ、小川が流れ上部からの雪解けの湖には、馬やヤクが水浴びをしている、それはまさにジャングリ・ラと呼びにふさわしい場所でした。




BCから先は、険しさが増すため馬は困難、現地スタッフ達もテントキーパーとしてABCを守っていただきました。いよいよこの先からが挑戦の始まりです。1人30㎏超の荷物を背負って自力登山の始まりです。

 


しかし、眺めるのと実際に歩くのとではスケール感の違いに圧倒され、状況がわからず突っ込むことは危険であると判断しました。
あらかじめ狙いを定めた場所まで偵察を送りルート工作を試みて確実性を重視します。 これが正解でした。
狙い通りのプラトーまで安全にハイアップ、雷と土石流を避けられる好条件4500㍍の地点にC1を設営することに成功しました。


C1は広大なカールの中に位置し、山を眺める場所としては最高な場所です。目標の山のルートファインディングにもかなり役立ちました。



アタック予定は深夜、しかし鳴りやまぬ雷と雨に、大幅に時間をずらしてのアタックへと変更を余儀なくされます。チベット高原は22時近くまで明るいため、時間設定には無理がないと判断、C1を出たのは7時を回っていました。


取り付き、本峰登攀開始
ここからロープを出しランニングコンテを多用して確実な支点を作りⅢ級程度の岩を登っていきます。 



足元のスパッと切れた落ちた稜線、絶対ミスが許されないナイフリッジをピナクルを支点に進んでいきます。 



時にスタカットを交えてハーケンを打ち進み、いくつも現れるギャップへの下降はひとつのミスで目も眩む深い谷へ吸い込まれてしまうだろう場所、ロアダウンも多用して確実にロープを伸ばします。  



核心は50㍍の垂直、一度はそのままアタックを試みましたが、ここは安全性と確実性を重視して、登山靴をクライミングシューズに履き替え、荷物も置いて空身でトライ、クラックが走っているためカムやナッツによる支点が有効に使えました。
4500㍍を超える切れ立つ岩でのクライミングは5.10はあろうかと感じました。  



ロープを多用しながら節理が脆く剥がれる標高5000㍍に迫る地点、いよいよ山頂が目視できる距離です。
しかし落石が積み重なる急峻なガレ場のトラバースが目の前に広がります。
僕らが与える刺激で一度岩雪崩となればガレ石に足をすくわれ下の見えない絶壁から間違いなく落とされるだろう。
間隔を開きロープを傷つけないように刺激を与えず慎重に切り抜けます。



山頂直下の岩の登攀はⅢ+級程度を登る本来はとても楽しいセクション。しかし山頂に迫るにつれて、ホールドやスタンスになる場所にはことごとく落石が積もっている後続に落石を落とさないように登る事すらままならない状態でした。



残り1ピッチ、ここから上部は巨大な岩が不安定に積み重なる非情に危険なジェンガ状態だと判断しました。そこに立っているだけで足場が崩れ落石を起こしてしまう。これ以上先は隊員の命の危険等も考慮し、この場所をこの山の最高点と見なし、 を5026㍍地点に用意しておいたプレートを設置することに成功しました。


ここから見る景色は素晴らしく、地球そのものを見ているような感動を覚えました。


令和元年6月26日
山梨県山岳連盟国際委員長
今村 量紀