第66回国民体育大会 おいでませ!山口


第66回国民体育大会「おいでませ!山口国体」の山岳競技は、10月2日から3日間、山口市セミナーパークを会場に開催された。競技クライミング先進県の山口だけあって会場はすばらしいもので、高さ15m、最大7mの張り出しを持つ可動リード壁と、体育館には複雑な凹凸持つボルダーが作り込まれ最高の舞台が整えられていた。

今年の山梨チームは、昨年に続いて関東地区予選を突破した少年男子と成年男子。さらに新たにトレーナー1名を加えた計7名。3年ぶりに本戦出場を逃した少年女子チームがいないのは寂しいが、その分までがんばろうという意気込みで現地入りした。前日の総合開会式では、山口が誇る卓球選手・石川佳純による炬火点火に続いて小田桃花選手が選手宣誓を行うなど、この地における山岳競技と小田桃花という選手への期待度がうかがい知れた。

少年男子 リード競技

昨年の千葉国体ではボルダリング種目で2位という成績を残している少年男子チームは、若尾と田中という同じコンビで練習と試合を重ねてきた。初日はリード競技の予選。得意ではない種目ということもあって、ふたりとも出だしは硬さが抜けない登りであったが、中盤からはポジティブなホールドを使う粘りがきく展開になり、辛抱強く高度を稼いだ若尾が終了点手前まで迫る。これでなんとか勝負に持ち込めた結果、予選は8位。首の皮一枚のところで決勝へ駒を進めることができた。


午後の決勝ではいくぶんリラックスできたのか、小核心を越える度に気合いの声を発する登りで7位でフィニッシュ。リード種目は昨年13位であったことからも好成績で終えることができた。

少年男子 ボルダリング競技

2日目以降のボルダリング種目になると、今度は田中が俄然調子をあげて次々完登をものにして予選は5位での通過。決勝最後のラウンドは上位4チームがほとんど横一線の大混戦だったが結局4位。勝負はどう転んでもおかしくなかっただけに悔しさが残るものになった。少年男子優勝は千葉県が連覇。少年女子は天才小田桃花を擁する山口県が異次元の登りで他を圧倒した。

成年男子

さて、今年も世界クラスのトップクライマーがひしめくハイレベルな戦いとなったのが成年男子。特にボルダリング競技の内容は、一見登り方が読めないような「岩場的」とでも形容したくなる課題が多く、微妙な動きを要求されるためにパワーが売りのジムクライマーは厳しい洗礼になったようだった。
 ベテランの内藤はこの手の課題を得意にしているが、最初のトライでわずかなフックムーブミスからリズムを乱し、ずるずる後退。代わりにパワーに定評ある根路銘が一人気を吐く登りでポイントを稼ぐ。しかし、チーム順位は37位と昨年同様下位に沈んだ。2日目のリード競技もらしくない内容で中間部でフォール。残念ながら実力を出し切ったと言うには程遠い内容で競技を終了した。


成年男子の競技レベルは世界レベルと言われてはいるが、特にボルダリングにおいては課題の難易度自体はおそらく昨年よりも低く設定されているように見受けられた。しかし「質」は明らかに違うものだった。より技巧的かつ瞬時に動きを修正する能力が問われるものに変化し、パワー一辺倒で解決できる課題はひとつもない無い。この辺り、国体でもワールドカップ並の質にレベルアップさせようとするセッター陣の意図と努力もあるようだ。

所感

また観客の数は、国体以外の大会と比べて桁違いに多く、年々盛り上がりも増しているように感じられた。国体が国内最高の舞台になりつつあることは確かであり、山梨県内の若いクライマーもぜひこの舞台を目標にしてもらいたいと願う。

最後にひとつ、トレーナーの存在と成果についてであるが、少年男子の入賞はトレーナーの存在抜きにはなかったと思う。ひざに怪我を抱えた田中に対するテーピンクはもちろん、今ひとつ調子を上げ切れなかった若尾へのアドバイスや、成年選手のマッサージからアイシングまでトータルに面倒を見てもらえたことに大変感謝している。

トレーナーは競技会当日だけ同行すれば良いというわけでなく、一年を通して選手と付き合い、身体特徴やバイオリズムを知ることによってサポートできるレベルが向上することは言うまでもない。派遣に伴う経費は必要であるが、選手にとってフィジカル、メンタル共に大きなよりどころになることを考えれば、競技力向上には絶対欠かすことのできない存在ということを付記しておきたい。 

記:山森政之(主任強化コーチ)

成績

成年男子 リード34位 ボルダリング33位
少年男子 リード7位 ボルダリング4位

▽天皇杯14位

選手、監督、トレーナー

 ▽成年男子 内藤聡(山梨市)、根路銘幸昌(韮崎市)、監督:渡辺晴彦(富士吉田市)

 ▽少年男子 若尾龍隆(山梨市)、田中慎一(韮崎工高)監督:山森政之(山梨市)

 ▽トレーナー:武井智洋(理学療法士/山梨市)