平成23年度山岳レインジャー反省

山梨県山岳連盟 自然保護委員会 平成231124日(木)19:00~ 甲府市総合市民会館

平成23年度山岳レインジャー 総括

調査山域は白根三山、鳳凰三山、甲斐駒・仙丈ヶ岳、八ヶ岳、奥秩父の5地域についてそれぞれ「定経路調査」「探索調査」が展開され、本年度も例年同様21組で12日、日帰り含め規定延228人の人員配置を17山岳会+自然保護委員会(名簿登録は122名)により実施された。規定人数に対し実働人員は2名以上の参加も多く大幅に上回った。

実施頂いた山岳レインジャーの方々に感謝致します。

今年度もレインジャー業務内容周知徹底のため、418日・27日の2日間研修会を実施、昨年を上回る延べ68名に参加して頂いた。調査業務報告書は研修会の成果もあり、年々内容の充実が見られた。しかし一部、調査方法・記載基本事項の欠如された報告書も見受けられた。本年度も天候不順による大雨の被害等で規定日に入れないことも多く、予定を大幅に変更せざる面も多数あった。入山してから荒天の場合は安全第一を優先、業務内容は必要最低限で良とした。

7月に自然保護委員会による山岳レインジャー兼高山植物学習会を仙丈ヶ岳(探索)を計画したが参加者が少なかったため、通算15回目続いた学習会は取止めとした。12日は日程的に難しい面と、学習会は周知されてきた面もあり転機を迎えているものと思えた。

調査活動は登山道沿い主体であるため18種全ては観察できなく、またキタダケソウは環境省で特別監視しているため除外されている。指定種の他、準希少種の報告も多数あり、これらは年度が増すごとに貴重なデータになるものと思える。調査票には自然保護全般の監視と捉え、指定種以外の高山植物観察・ライチョウの確認・シカによる食害・お花畑の開花状況等特記事項等も多く寄せられた。

調査業務 一般概況

高山植物指定種キタダケソウを除く17種のうち期間中、指定範囲内山域の登山道沿いの定経路調査・探索調査では、昨年確認されたユキワリソウがその場所の調査自体が無かったため減で、代わりにキタダケキンポウゲの確認があり10種の開花確認となった。

指定種開花状況

確認された指定種は

・白根三山:ホテイラン、キタダケトリカブト、タカネマンテマ、タカネビランジ、

キタダケキンポウゲ、ニョホウチドリ

・鳳凰三山:タカネビランジ、ホウオウシャジン、クモイコザクラ、カモメラン、

・甲斐駒・仙丈ヶ岳:クモイコザクラ、タカネビランジ

・八ヶ岳:クモイコザクラ、ムシトリスミレ、カモメラン

・奥秩父:カモメラン、クモイコザクラ

また、指定種以外の準希少種も多数報告された。

動物

特記事項でニホンジカによる高山植物食害・樹種の皮剥被害は全山域で多くの報告があり、着実に被害が拡大している。北岳草すべり・トラバース道では保護の防護柵の設置行われた。ライチョウの目撃情報は本年度も仙丈ヶ岳・北岳での確認が寄せられた。


希少野生植物調査票の提出結果

研修会実施により平成23年度版調査業務実施要領の徹底、総会時に各会別に調査票・地図等配布し、結果的には昨年度より精度は上がった。しかし、一部にもう少し努力して欲しい面も見られ、調査業務に対して報酬が支払いされる意味を周知理解されたい。またレインジャー実施者のうち一人は必ず研修会に参加し、事前・事後に予習・復習して欲しい。

全般

・配布書類等については会の責任者から正確に伝達されてない面が見られた。

・部数が正副の2部であるが1部しか提出されてない → 昨年に比べかなり減ったがコピー等編集者に負担がかかる。

・提出が請求しなければ出て来ない → 纏める側が大変、協力をお願いしたい

・調査地図のルートがわからない → 赤線でルートを入れ、ポイントには丸印をつけ符号をつけマーカーで着色する。コメントも必要に応じて記入

・確認された希少種の写真が無い → 信憑性に欠け報告書に記載できない。希少種は必ず写真をより多めに添付する(花と葉・近景と接写)

報告書:定経路調査・探索調査

・種名(その他)欄は準希少種が確認された場合のみで一般的種名は不必要

・生育状況の表現、未確認の場合は記載不要、確認株数の記載が無い等

3年前のもの旧用紙の使用があった。今年の用紙は20114制定版

・地図・写真が指定のものを使用してないものも見られた

・確認株数の不明欄?

・ライチョウの確認は鳥獣目撃アンケートも合わせてつけて頂ければ有難い

・指定種が無い場合は調査業務・自然保護の観点から全般的特記事項が欲しい

間違い易い希少種
キタダケキンポウゲとミヤマキンポウゲ、ハコネコメツツジとチョウジコメツツジ、ニョホウチドリとハクサンチドリ、キタダケトリカブトとホソバトリカブト、タカネビランジとオオビランジ

その他

今年も定経路調査では、社会人山岳会であるゆえその日の個人的都合、大雨、通行止め、残雪などで予定通り行かない面もあり、状況により探索調査として振り替えて頂いた。どうしても出来ない場合は他会に振り替えるなど、スピーディな連携が欲しい面も見られた。

調査は指定された希少種の記載が主体であるが、時期的に見当たらない面もあり今年度の報告を分析し、割振り自体も開花時に集中するなど考慮したい。準希少種の記載等は今後、大変有用になるものと思われる。探索調査は昨年度への上塗りでより希少種分布が明確になるものと思われる。それにより定経路調査の見直しも検討事項として考えられる。

また指定山域だけでなく他高山帯においても指定種が確認されているため、探索調査のあり方も検討していきたい。


「山梨県希少野生動植物の保護に関する条例」で定め監視対象の希少高山植物種

キタダケソウ・キタダケキンポウゲ・キタダケトリカブト・ヒイラギテンダ(クモイカグマ)、キタダケテンダ、キバナノアツモリソウ、カモメラン、ホテイアツモリ、アツモリソウ、ニョホウチドリ、ホテイラン、タカネビランジ、タカネマンテマ、ホウオウシャジン、ユキワリソウ、クモイコザクラ、ハコネコメツツジ、ムシトリスミレ


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