中国 四川省5000m未踏峰登山報告書


山頂をバックに山梨山岳連盟の旗と隊員

1日目・・・9月8日(晴れ) 山梨~成田~成都

9:30甲府エルク集合9:50発-13:00成田民間駐車場-13:50成田空港-17:30成田発-23:30成都着-24:45温江区ホテル-25:30就寝

9月に入っても相変わらず暑い日が続いていて、あっという間に出発を迎える。エルクの駐車場に集合して、金丸車に各自の大型ザック4、それと登攀具、ロープ、登山靴を入れた23㎏ぎりぎりに収めた共同装備ザックと手荷物用の小型ザック4を積み込み、成田へ向かう。順調に都心を抜けて成田の民間駐車場に車を預けて、成田空港までの送りのバスに荷物を積み込み空港へ。空港で海外用携帯電話をレンタルし、荷物を預ける。定刻の1730分に離陸し、成都に2330分に着く。到着ロビーでは、四川省登山協会顧問であり、今回計画の手配をしてくれた李慶さんが、無事出迎えてくれた。

トヨタのFJに荷物を積み込み、宿泊場所へ向かい、宿で李慶さんの仕事仲間であるジャンさんと合流する。李慶さん達から部屋で明日からの日程、その他について説明を受ける。これから10日間、我々の登山をサポートしてくれるので頼もしい限りである。


2日目・・・9月9日(曇り時々晴れ夜中雨) 成都~日隆

8:00起床-9:30出発-15:30巴朗山峠(散策)-16:30四姑娘山展望台-17:30日隆ホテル-22:00就寝


四姑娘山展望台で李慶さんと隊員達 

部屋で簡単な食事を済ます。宿の前には2台の車が用意してある。1台には李慶さん達のBCでのテントや食料、その他装備が満杯で、もう一台に我々の荷物を積み込み日隆へ。宿で食事が出たが腹にたまらず、途中で饅頭とおかゆを食べる。高速道路より先はまだまだ地震の被害が残っていて危険な道が続くが、途中の村では新しい建物が数多く建設されている。巴朗山峠では順応を兼ねて散策をする。峠から下り日隆手前の四姑娘山展望台で休憩する。

成都近郊の宿から8時間後、ようやく日隆の宿へ。車から装備を降ろし、部屋へ運び込み、明日からの登山用に荷物を整理する。夕食は沢山の料理とビールをご馳走になり、明日からの登山に備える。


3日目・・・9月10日(曇り夕方より雨) 日隆~老牛園子上部山小屋

7:00起床-10:00出発-10:55登山口発-11:35稜線-15:05老牛園子上部山小屋-22:00就寝


日隆を出発の様子

今日は時間的な余裕があるので、ゆっくりと起床し宿の食堂で朝食を済まし、必要な装備を車に積み込みポーター達の待つ登山口へ。馬が4頭用意してあり、ポーターはオウさん、シュウさん、馬方はヨウさん。ヨウさん達が手際よく馬に沢山の荷物を積み、いよいよ登山が始まる。


なだらかな登山道を進む。周りには沢山のヤクや馬が放たれている。途中で四姑娘山の素晴らしい姿も見る事が出来る。小屋の手前で雨となり雨具の着用となった。時間歩いて小屋へ到着する。屋根は石葺き、壁は石積みで中は寝床用の棚があり、真ん中で焚火が出来る。


老牛園子上部山小屋

夕食まで時間がたっぷりあるので外に出ると雨が上がり、雲も切れて来て登山目的とする山が見えて来た。あらかじめ作って来た地形図と見比べる。川を挟んだ対岸に3つのピークが見える。東端の山はここからでは遠すぎて時間的に無理、中央の山と西側の山が登れそうで、その中間にコルが見える。明日はそのコルへ続く沢にBCを作る予定。夜はジャンさん、オウさんが野菜スープを作ってくれた。ご飯は李慶さん厳選のお米で日本の米と変わらない位に旨い。食べ終わると、オウさんから歌が始まりカラオケ大会になり、我々も負けじと北国の春から始まり山口百恵のいい日旅立ちまで何曲か歌い夜は更けた。


4日目・・・9月11日(雨時々曇り夜雨) 老牛園子上部山小屋~BC

8:00起床-(天気待ち)-11:25出発-11:35老牛園子-13:20BC-(上部偵察)-14:20BC-21:30就寝


BCでの隊員のテント

夜は雨が降り続いたようで、周りの山々の山頂付近には雪が付いている。今日はコルへ続く沢に移動、BCを設営して、時間があれば、偵察の予定だ。まずは昨日のご飯でおじやを食べて、コーヒーを飲み天気の回復を待つ。お昼近くようやく出発となる。しばらく下ると老牛園子。7月、8月は日本のツアー会社のテントでいっぱいになるそうだ。丸太が掛かった橋を渡り対岸へ、樹林帯の斜面を1時間程登ると森林限界に出る。そこからさらに上部へ向かい、水場と薪が確保出来そうな所を探し、岩棚を利用してテントをタープにしてキッチンテントとし、周りに我々のテントを張る。標高は4100m位か。金丸隊長、中澤隊員の二人は、まだ時間も早いので順応も兼ねて稜線まで偵察に出かけるが、天気は雨からみぞれに変わり、ガスがかかり視界不良となったため、途中で引き返す。その後はキッチンテントでウイスキーと焚火の煙に燻られながら時間を過ごす。雨は相変わらず降っている。ジャンさんのカレーを食べて明日の天候の回復を祈って寝る。


5日目・・・9月12日(小雪後曇り時々雨) BC~コルまでの偵察~BC

8:00起床-(天気待ち)-11:50偵察出発-14:35コル15:45-16:50BC-21:30就寝


ジャンさんと手作りギョウザ

明け方、外が静かだと思ったら雨が雪に変わっていて、周りは真っ白の一面雪景色。李慶さん達も季節外れの雪に驚いていた。ガスで視界は利かないので停滞ムードでゆっくりと食事をとる。しばらくすると雨に変わったので金丸隊長、中澤隊員でスパッツと冬靴の装備で稜線まで山の偵察に出かける事とする。視界もあまり良くないので、赤テープでマーキングをして行く。1435分にコルに着くが相変わらずガスで周りの山がよく見えない。BCの李慶さんに無線交信をして1時間程待機して様子を見る事になった。しばらくすると一瞬だがコル東側の山が見えた。雪の付いたゴツゴツした岩壁と鋸状の稜線がだいぶ難しく見える。コル西側の山は雪の付き方は同じだが若干傾斜の緩い斜面が見え、こちらの方がやさしく思えた。すぐにガスに包まれてしまい、仕方なくBCに降りる事にする。トレースが残っていたので迷う事無くBCに戻る事が出来た。とりあえず偵察の収穫はあった。この時点ではコル東側の山に登る事も計画の中にあった。BCでは岩下隊員と川島隊員がジャンさんと手作りギョウザを作ってくれていて、夜は水ギョーザで美味しく食べた。結構グルメなBCでの食事である。明日はいよいよ未踏峰へ。


6日目・・・9月13日(曇り後晴れ時々曇り) BC~無名峰登頂~BC

7:30起床-8:30出発―9:25沢中間部―12:10コルへ続く尾根中間部―14:05偽ピーク-14:20無名峰頂上―14:25中間ピーク―15:25コルへ続く尾根中間部-17:00BC着―22:00就寝


朝日を浴びる四姑娘山

アタックの日、天気はまずまずだ。メンバーは李慶さん、オウさん、シュウさん、金丸隊長、中澤隊員、岩下隊員、川島隊員の7名。ロープ及び登攀具をポーターのオウさんシュウさんに渡し、BCを後にする。時々四姑娘山も姿を見せ素晴らしい景色だ。


順調なペースで稜線の手前に着く。左右の山は雪が付き昨日の時点より圧倒的な雰囲気がある。


コル東側の山

相談の上、コル西側の山をアタックする山に決める。傾斜の緩い雪面を登って行く。アイゼンは必要ないが、オウさん、シュウさんは人民靴で登って行く。雪は深い所で30㎝程あり、岩の上にうっすらと積もった雪はスリップしやすくやや歩きづらい。風も無く、寒くもなく絶好のアタック日和か、隊員も体調は良さそうだ。コルへ続く尾根に出た後しばらく登り、上部に偽ピークが見える場所まで来た。ここまでオウさんがトップを登っていたが、ここから日本隊のメンバーがトップを変わりピークを目指した。



偽ピーク手前

傾斜が増した所を登りきりピークに着いたかと思えたが、稜線が続きその2つ先のピークに一番高い所が見える。ナイフリッジ状の稜線をトラバースし、最後は足元が崩れそうな雪を踏んでついにピークへ、全員が未踏峰を踏んだ


山頂は狭く4人が一緒に立てないので、順番に立つ。遥か下には日隆の町も見え、東側は深い谷が見え、その奥には山並みが広がり、言葉では書けない素晴らしい景色が見える。厳しい登山ではなかったが、それ以上にこの景色を4人で見れた事が一番の成功ではないかと思う。李慶さん達が中間ピークでこちらの写真を撮っているのが見える。我々もピークを後にして李慶さん達の所まで戻り、山頂をバックに写真を撮り下山とする。無事にBCまで戻り、みんなで握手をして登頂を祝った。その夜は鳥を丸ごと料理してくれて、他にも色々な料理を振舞ってくれた。酒が旨かった事は言うまでもない。


無名峰の山頂で


7日目・・・9月14日(曇り後晴れ後曇り) BC~老牛園子上部山小屋

9:00起床―12:10出発―14:05老牛園子―14:35老牛園子上部山小屋―21:30就寝

李慶さんにコル東側の山は厳しそうなので諦めることを伝えると、大姑娘山を案内するという。この提案を受け、今日は下の小屋へ移動するのみのレスト日だ。朝はだいぶ冷え込んだらしくテントは霜で真っ白。昨日の登山で李慶さんとオウさんが雪目になってしまって辛そうだ。我々は荷物より少し先にBCを発つ。途中で金丸隊長、川島隊員がキノコを採り、夜のつまみになる。小屋に戻るとすぐにシュウさんとヨウさんが馬と荷物と一緒に来た。夜は2回目のカレー。外はまた雪が降り始めてきた。明日の大姑娘山は天気次第だ。


8日目・・・9月15日(夜半雪曇り時々雨) 老牛園子上部小屋~大姉娘山~日隆

6:00起床―7:55出発―9:25大姑娘山ABC―12:15大姑娘山―13:40大姑娘山ABC―16:45登山口-17:00日隆ホテル-21:30就寝


大姉娘山の山頂で隊員とオウさんシュウさん

ジャンさんの食事の支度の音で目が覚める。さっそくおいしいチャーハンを作ってくれた。外は雪が止み曇り空で山へ行けそうだ。下山は小屋へ戻らず日隆まで下る計画で、薄明るい中をオウさん、シュウさんと我々4人で出発する。歩き始めてすぐに雪面となり、1時間半ほど歩くとABCに着く。立派な小屋が立っているが、あるホーページによると少し前はだいぶ汚い場所だったようだ。ABCから稜線に出るまではキツイ斜面を3時間登る。稜線に出るとそこには柵があり、登山道沿いに先へ続いている。時々薄日が差し、雪もだいぶ積もっていて紫外線が強い。サングラスをオウさんに貸してあるので、3人でサングラスを交代する。山頂下で休憩して35分で山頂へ着く。夏の雪のない時期は大勢の登山者が登るが今は我々だけ、山頂で写真を撮り下山する。

下山途中1パーティーに行き会う。さらに稜線から下るとスニーカーの数人の若者たちと行き違うが、その装備では明らかに無謀登山である。大姑娘山ABCの先で休憩して、その先はダラダラした長い標高差2000mの登山道を下り、ようやく日隆の町まで降りてきた。登山口では李慶さんが車で迎えに来てくれていた。ここでオウさんシュウさん、ヨウさん達とお別れとなる。宿では温かいシャーワーで汗を流す事が出来た。夜は沢山の美味しい四川の料理が出てきて、冷たいビールがとても美味しかった。

9日目・・・9月16日(小雨後雪後曇り) 日隆~都江堰~成都

8:00起床―9:50出発―10:35巴朗山峠―18:20李慶氏事務所―19:30成都ホテル―(夕食)―25:30就寝


雪の巴朗山峠

今日は成都へ移動する日であるが、朝、李慶さんから、中国全土で尖閣諸島の問題で反日デモが各地で起きていて、成都でもデモが起きているらしいとの話があった。我々もこれから成都へ戻るので少し心配になる。陽気は雨が降っていて寒い。2台の車へ荷物を積み、それぞれに分乗して、日隆を後にする。巴朗山峠は薄っすらと雪が積もっていて時たまスリップする。

臥龍の町の先で道が荒れていて、大渋滞したが無事通過することが出来た。所々渋滞もあったがなんとか都江堰に着く。ここもユネスコの世界遺産に登録されているらしい。我々はここで少し遅いが四川の辛い昼食となる。成都まで2時間ほど高速を走り、成都の中心街の渋滞を抜けて李慶さんの事務所へ。いろいろ事務所の中を見させてもらう。隣には李慶さんが社長を務めるレストランがある。さて、今日の宿泊場所であるが、李慶さんが反日の影響を懸念して安全なエリアにあるホテルへ変更してくれた。ただし夜は外出禁止とのことである。ようやくホテルに到着する。とても立派な四ツ星ホテルだ。我々は外出が出来ないので、部屋で李慶さんにお土産の買い物を頼む。21時に李慶さんが迎えにきて、李慶さんのレストランに向かい美味しい四川の料理を堪能する事が出来た。食事後、ここでジャンさんとはお別れとなる。BCではいつもおいしい食事を作ってくれて感謝です。



李慶さんのレストラン


10日目・・・9月17日(曇り後雨後曇り) 成都~成田~山梨

7:15起床―7:30出発―8:00成都空港―10:05成都発―15:30成田着―20:30甲府エルク着

朝、あわてて支度をし、なんとか間に合わせ車に乗り込み空港へ。荷物の機内預けの手続きを完了して、時間があるので空港内のケンターッキーで朝食を食べて、李慶さんとお別れとなる。丁寧な仕事と誠実ですばらいい人柄で、大変心強く10日間が過ごせたことは間違いない。どうもありがとうございましたと何回も繰り返し別れを惜しんだ。岩下隊員と川島隊員は李慶さんとの来年の計画があるらしい。搭乗手続きを済まし、飛行機へ乗り込み、定刻に少し遅れて離陸となる。6時間後成田に到着、金丸車で一路山梨へ戻る。エルクへは20時30分に着き一安心。時間も遅いので22日に帰国後の打ち合わせをする事を確認し、解散とし各自家に戻る。

無事に登山活動も終わり、また、無事に帰国することができました。山梨県山岳連盟の皆様、ご協力ありがとうございました。

注:時間は全て日本時間を記載(時差1時間)



川島隊員の感想

2010年から双橋溝・長坪溝・海子溝と3度目の四川省の山々へ

準備段階で甲斐駒の鋸縦走(1泊2日)お天気に恵まれました。今回はトレッキングではなく5000m未踏峰の雪景色の山へ登頂でき、B.Cでお天気待ちの際にジャンさん岩下さんと3人で本場の餃子・らーめん作りと世界遺産の中で本当に贅沢ついつい食べすぎ。

周りを見回せば5000m以上の雪をかぶった山ばかり最高の景色でした。

今年は寒さが早いらしくポーターのオウさんシュウさんもびっくり、冬装備が役に立ちましたこの時期4000m辺りに雪は積もらないそうです。

15日山にいられる最後の日大姑娘5038mにも登頂。

隊長の金丸さん 副隊長の中澤さん 岩下さん良い仲間に恵まれ最高の10日間でした。

李慶さん・ジャンさんのおもてなしの心は日本人よりも日本人ガイド兼ポータの王さんシュウさんとは言葉は通じないが心と心で日中関係が早く良くなって欲しいと思います。

岩下隊員の感想

「えェ?! 李慶さんがいない!」空港出口に迎えの李慶さんがいません。急激に拡大した成都空港は出口場所もかわったようです。予定外はまだ続きました。

例年、四川省の気温は日本とほぼ同じですが、目指す未踏峰5000m峰(海子溝、老牛園子の南東にある)は前日まさかの雪。地元ポーターも驚く気候になりました。使わないと思った冬山装備があり安心でしたが。まあ、その雪で足下が締まりかえって歩きやすかったのかもしれません。順調な登頂で、景色も楽しみました。

翌翌日は大姑娘山です。一度は登ってみたい山でしたが、20~30cmの雪の中を登れるとは、チャンスに恵まれた山行でした。山頂はガスのため何も見えなく残念。写真撮影後早々にくだりましたが、日隆への尾根路は雪も溶け、ヤクと馬の草原から長坪溝の向こうの山々を楽しみました。

日隆から巴朗山峠の車道は雪。例のダムサイトの道は、荒天で渋滞でした。

最終日の成都は、反日デモ騒動でホテルから一歩も出ずじっとしていましたが、予定の日程で日本に帰ることができました。

 

金丸さん、中澤さん、川島さん、李慶さん、ジャンさん、王さん、シュウさん

雨と雪とたき火の日々でしたね。たき火の煙はつらく、においは今も忘れることはできませんよ。麺、餃子づくりは楽しく、おいしかったですね。

登頂でき、感謝しています! 楽しかったです!