縦走ハイキングレスキュー講習会 2012

日山協の縦走ハイキングレスキュー講習の内容を岳連内で普及するため、上原技術指導委員長が講師となり、レスキュー講習会を、2012年10月14日に甲府 千代田湖 堂の山キャンプ場において、開催した。

講師も含め20名の参加者があり、午前中は、日山協のテキストによる机上講習を行い、午後は屋外において、実施講習を行った。

午前午後ともに、講師の説明を参加者は熱心に聞くとともに、活発に意見もだされ、非常に実りの多い講習会となった。


セルフレスキュー概論(テキストより)

レスキューとは、救助・救出・救援活動を言います。山岳では遭難対策と一括して取り扱われており、搬送・救出活動と考えられておりますが、近年ではヘリコプターによる救出が一般的になり負傷部位の応急手当、安全地帯までの一次退避を行うセルフレスキューと二次退避を行うチームレスキューに大別されております。本編では、縦走ハイキングにおけるセルフレスキュー及び遭難しない為の遭難予防対策について説明します。

 

机上講習の様子

事前準備、登山計画書提出の必要性が改めて確認された。特に登山計画書の提出は何かあったときに、捜索隊への手がかりになるため、提出の有無で発見までの時間に大きく影響することがある。最低でも、家族等にはどの山、どの山域に入るのかを正確に伝えておくことが、非常に重要である。

万が一遭難して、ヘリコプターでの救出となり、民間のヘリでの救出となった場合に、1時間あたり50万円もしくは1分1万円の費用がかかる。また、民間の救助隊を編成した場合は1人当たり3〜5万円/日の費用となる。遭難すると数百万単位の費用がかかることがあるので、山岳保険への加入を大切だ。

携帯電話等で、救助要請をする場合は、110番(警察)するのがよい。管轄の警察署に電話するよりも、110番にかけること。

応急処置で傷を洗浄する場合はペットボトルの蓋にあらかじめ穴をあけたものを用意しておくとよい。水を噴射することができるので、少量の水で効率よく傷口の洗浄が行える。穴空きの蓋が無い場合は、登山ナイフ等で、ペットボトルの本体に穴をあけて、そこから水を噴射させることもできる。

レスキューシートの体験

レスキューシートとは、銀色の薄いシートで保温、防水性が高い。昔は2000円以上して非常に高価だったが今では、山用でも600円前後で購入できる。東日本大震災後の防災意識の高まりから、廉価なものであれば、100円ショップでも販売している。(ただし、性能、耐久性は劣ると思われる)廉価なものでも1枚ザックに入れておけば、いざというときに非常に重宝するので、山では常に携行を推奨する。


一度、開封すると元に戻すのが困難であるために、いままで講習等で使用体験することはなかったが、今回100円ショップで購入したものを開封して、使ってみたのが写真。

他に100円ショップで販売している針金も、登山靴の応急修理等で役立つことから、常にザックに装備として入れておくというメンバーが多くいた。

ブルーシートによる搬送

要救護者をブルーシートの上に載せて、安全なところまで簡易搬送する方法を実施体験した。

頭を怪我している場合は左の写真に頭をサポートする人員を配置する。

搬送する人の位置は身長を考慮する。

持つ所は丸めて持ちやすくしたり、ストック、カラビナ、石などを中に入れてシートを丸めることにより、持ちやすくなる。

また、巻き入れたカラビナや石に肩に通したテープスリングをインクノットして、補助する方法も試した。

ちなみに、このブルーシートも、いまでは100円ショップで買える。

補助ロープの活用

120cmのテープスリングを利用して、簡易ハーネスをつくる。その場合、肋骨の下にテープスリングが入り込まないように脇の下まで十分に上げて結ぶのがミソ。

60cmのテープスリングをフリクションノット等で、フックスされた7〜8mmの補助ロープにセットし、簡易ハーネスに安全環付きカラビナで連結して、危険な箇所での安全性を確保する方法を学ぶ。


ちなみに、素材がダイニーマのテープスリングは比較的熱に弱いという意見や、足などをすべらして、とっさにノット部分(固定ロープに巻き付けた部分)をつかんでしまうと、制動がかからず、滑り落ち、摩擦熱でノット部分が溶けてしまう可能性もあることが話し合われた。

カッパでの背負い搬送

カッパを使って、簡易な背負子を作る方法を教わった。 お尻のクッションとなるタオルなどを上着の裾ポケットに入れるか、上着裾部分に入れてシュリンゲで結ぶ。そして、その部分をズボンに入れて、連結し、外れないようにシュリンゲで結ぶ。上着とスボンが連結されたら、手の袖と足の袖部分を結ぶことにより、簡易な背負子となる。

左写真は、カッパ背負子を使って、人をおぶったところ。

他にも、テープスリング3本を使って、簡易背負子をつくる方法がメンバーから、披露された。

松葉杖

ストックとテーピングテープを使って、簡易な松葉杖をつくった。



山梨県山岳連盟所属の山岳会の会員になることにより、登山を安全に行うためのノウハウを得たり、いざというときに助けてくれる仲間ができることになります。山岳会には入会しないで、山に行っている方は、これを機会に山岳会への参加を検討してみてください。

山梨県山岳連盟加盟の山岳会はこちらです。